2020年7月7日火曜日

ポピーとよさかにて

帰り道、小腹が空いたので、新新バイパスの競馬場インターで旧道へ降りた。

旧街道沿いにあるドライブイン「ポピーとよさか」には古色蒼然たるうどんの自動販売機が今なお稼働している。

昔懐かしい自動販売機のうどん。給食のソフト麺みたいな麺は美味すぎないあんばいの良さでほっとひと息つかせてくれる。

店の一隅に文化財のような顔で据わっている自販機へ百円玉を3つ入れてボタンを押すと、古すぎて懐かしさよりも新鮮さを感じさせる光電管の文字がオレンジ色に灯って、実際の時間よりも早く30秒をカウントダウンする。

ややフライング気味に、ゼロまで数秒をのこして「チーン!」
出来上がりを知らせるベルの音も電子音ではなく本物のベルの音だ。

うどんもそばも、店内の厨房で洗って再利用される黄色いフニャフニャした器に満杯の状態で出てくる。狭い取り出し口に付いているアルミ製の落とし戸が強いバネで押されているので、柔らかい器いっぱいの熱いつゆをこぼさず取り出すにはそれなりの習熟度を要する。

注意深く取り出したうどんを、潔癖症の人が逃げ出しそうなペタペタしたテーブルにそっと置いたら、自販機に向きなおって箸入れから割り箸を引き出し、横のテーブルにふたつ行ってしまっている七味の容器をひとつ取り戻してから、座ってまずはつゆをひと口。

あれ?

つゆが薄い。というか塩気がまるで無い。色も無色透明。これはお湯だ。

「すみません」

店の奥にある厨房へ行って、出来損ないのうどんと引き換えに店のオヤジさんから百円玉を3つ受け取る。

「もう一回やってみて。駄目だったらまた返金するから」と店のオヤジさん。

うどんをもう一杯。「チーン!」

「ん・・・ああ、お湯だ!」

「また駄目?」

「いや、いいや。オヤジさん、醤油あります?これにかけて食べる。麺もかき揚げも何杯ももったいないから」

「そう?醤油あるよ。あるけど、つゆもあるよ」

「あ、つゆある?」

「そこ(自販機)に使うやつだから濃いけど、あんばいすれば」
と、業務用の大きな容器を奥から出してきてくれた。

容器の蓋を開けて、ほんのひと垂らしばかり器にチョロリと注ぐと、透明だったうどんの汁が途端に褐色になった。一体何倍濃縮のつゆなのだろう。

ひと口すすってみて、「あ、美味い。OK、今度OK」

「そう?いい?ゴメンね」

無事にうどんを食べて、帰途についた。また食べに行こう。


蓄音機の落書き

 スピーカーとアンプを土産に宮﨑監督を訪ねた折のこと。 帰り際に監督が「これ」と言って封筒を差し出した。 「なんですか?」 「それで一杯飲みなよ」 見ると、『お礼』と書かれている。上には朝顔蓄音機の絵が。 「駄目ですよ。土産の礼金なんて聞いたことないですよ。それに一杯どころじゃな...