スピーカーとアンプを土産に宮﨑監督を訪ねた折のこと。
帰り際に監督が「これ」と言って封筒を差し出した。
「なんですか?」
「それで一杯飲みなよ」
見ると、『お礼』とあって、その上には朝顔蓄音機の絵が描かれていた。
「駄目ですよ。土産の礼金なんて聞いたことないですよ。それに一杯どころじゃないでしょうこれは。細かいものをいじる仕事してるんですから、触っただけで分かるんですよ」
返すが、監督は手の甲で受け取らない。
「良いんだよ。友だちと一杯やれば良いじゃない」
「駄目ですって」
「だから良いって言ってるだろ!俺はもう一生分稼いだんだから」
「駄目です」
「だからお前は貧乏なんだよ!こういう時は儲かったと思ってさっさと仕舞っときゃ良いんだ」
「じゃあ封筒だけください。中身は要りません。絵のところを飾りますから」
「こんな落書きやる訳ないだろ。まったく・・・これは、こう、財布に・・・戻す」
言いながら監督は封筒の中身を抜くと、ポケットから出した二つ折れの財布へ戻し、封筒を上にかざして中をあらためてから折って財布と一緒に仕舞って、
「はい!あ〜あ。お前も相当変わってるな」と笑われた。
あれからしばらく経って、歳を食っておいおい図々しさが募ってきた今、あらためて思い返して、監督の言うとおりにあの『お礼』は貰っておけば良かったかなと思い直している。そうしていれば蓄音機の絵は今、自分の部屋か店に飾ってあったはずだから。
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