おやつにと頂いたアップルパイが思いのほかサクサクで食べるのに苦戦した。
ボロボロ生地の剥がれるパイを食べていたら、以前、宮﨑監督のアトリエにシナモンロールを土産に持ってうかがった時の事を思い出した。いつものようにあれこれ話をしてひと息ついた時、「せっかくだからこれ食おう」と、監督はシナモンロールの箱を開けた。
淹れなおしたコーヒーを前に、カウンターで食べ始めたものの、すぐに他の菓子を選ぶべきだったと後悔した。サクサクのデニッシュ生地や砂糖が剥がれてこぼれる。
「ははは、ボロボロだなあ」
監督に笑われた私は、カウンターにどんどんこぼれて行くシナモンロールのなれの果てを手で集めながら、
「すみません。食べたらここ拭きますんで・・・」
謝りつつ顔をあげて見ると、そこには片手にカップを、もう一方の手にシナモンロールから剥がした紙を丸めて持って涼しい顔でコーヒーを飲む巨匠・宮﨑駿がいた。
「監督、どうやって食べたんですか?」
「ええ?そりゃ普通に食ったさ」
静かに笑う巨匠を見て、私は『千と千尋の神隠し』でカオナシが番台蛙を丸呑みにするシーンを思い出した。
淹れなおしたコーヒーを前に、カウンターで食べ始めたものの、すぐに他の菓子を選ぶべきだったと後悔した。サクサクのデニッシュ生地や砂糖が剥がれてこぼれる。
「ははは、ボロボロだなあ」
監督に笑われた私は、カウンターにどんどんこぼれて行くシナモンロールのなれの果てを手で集めながら、
「すみません。食べたらここ拭きますんで・・・」
謝りつつ顔をあげて見ると、そこには片手にカップを、もう一方の手にシナモンロールから剥がした紙を丸めて持って涼しい顔でコーヒーを飲む巨匠・宮﨑駿がいた。
さっきまで傍にあったシナモンロールは既にどこにも、影も形もなかった。
“いつ抜いたか、いつ斬ったか”は、子母澤寛の『座頭市』の有名な一節だが、宮﨑監督は握りこぶしほどもあるシナモンロールをこのわずか数瞬の間にどう食べたのだろうか。
さらに驚くべきは、監督の前のカウンター上にも髭にも、どこにもシナモンロールのかけら一つ付いていない事だった。
“いつ抜いたか、いつ斬ったか”は、子母澤寛の『座頭市』の有名な一節だが、宮﨑監督は握りこぶしほどもあるシナモンロールをこのわずか数瞬の間にどう食べたのだろうか。
さらに驚くべきは、監督の前のカウンター上にも髭にも、どこにもシナモンロールのかけら一つ付いていない事だった。
「監督、どうやって食べたんですか?」
「ええ?そりゃ普通に食ったさ」
静かに笑う巨匠を見て、私は『千と千尋の神隠し』でカオナシが番台蛙を丸呑みにするシーンを思い出した。