2022年7月16日土曜日

塩分

数年前にアトリエ二馬力を訪ねた折のこと。

「俺、今日昼まだなんだけど、ちょっとメシ食っていい?」と宮﨑監督。

時計を見ると14時をまわっていた。

お忙しい時にすみませんと詫びると、「いや、お忙しいって、俺はいつも“お忙しい”んだけどさ」と監督。

“お忙しいところ” ”お邪魔します”そんな社交辞令の常套句をしばしば監督は突っぱねるようにあしらう。持って回った言葉のやり取りが嫌いなのだ。あがり際にお邪魔しますなど言おうものなら「お邪魔しないでくれよ」。気難しいようだが、しかし、巨匠・宮﨑駿のこれはユーモアだ。


「これ知ってる?味噌汁」

監督は銀色のかたまりを振って見せた。フリーズドライのインスタント味噌汁だった。

「これね、具だくさんでだしが利いててうまいんだよ」

カウンターの流しに伏せてあった椀をひっくり返すとフリーズドライのかたまりを入れて湯を注ぎ、かき混ぜてひと口。

すすった途端、「薄い!最近の味噌汁はなんでこんなに薄いんだ!?」

カウンターの棚から塩の袋を出すとスプーンで掬ってサッとひと匙椀へ。

「うん・・・」

あっけに取られる暇も突っ込む間もなく弁当箱が開いて現実の「ジブリ飯」が始まった。なにしろ創り手自身のそれだ。すべてのジブリ飯の父。今様に言うとすれば、さしあたり“シン・ジブリ飯”といったところか。

蓄音機の落書き

 スピーカーとアンプを土産に宮﨑監督を訪ねた折のこと。 帰り際に監督が「これ」と言って封筒を差し出した。 「なんですか?」 「それで一杯飲みなよ」 見ると、『お礼』と書かれている。上には朝顔蓄音機の絵が。 「駄目ですよ。土産の礼金なんて聞いたことないですよ。それに一杯どころじゃな...