2023年12月13日水曜日

弁当

 朝、全粒粉食パンを焼いてメープルジャムを塗って食べた途端に強烈な懐かしさに襲われた。何だろう、なんだっけと一所懸命思い出したらバランスアップのメープル味だった。サービスセンターで即時修理をしていた時によく食べていたのだった。

当時は昼休みにカップ麺を待つ間にも修理品が入ってきた。作業を終えて休憩室に戻ると、ふやけた麺が蓋を持ち上げていた。それでバランスアップにして、やがて弁当を作るようになった。弁当は休憩室ですぐに食べられるもの。大抵はおにぎりで、時々カレーを作って持って行った。

ある時、弁当を食べようとしたら、技術者長のAさんから「お、カレーか。ちょっと味見させてくれよ」と言われた。どうぞと答えた途端に即時対応に呼ばれた。作業を終えて休憩室へ戻ると、テーブルに弁当は無く、流し台に洗ったタッパーが伏せてあった。

「味見って言ったじゃないですか!」と抗議すると、Aさんはこちらを振り返り、のそりと半歩前に出ると「なんだよ・・・」と低く静かに凄んだ。

袖が鬱陶しいからと空調の効いているのを良い事に制服は年中夏服で通し、半袖から丸太のような腕を出してノシノシと所内を歩くAさんは技術者の間では知られたN社の最古参で、ズシリとした親方・親分的な佇まいの人だった。その迫力に気おされて私は泣く泣く引き退がった。

仕事帰り、「よう、昼間は悪かったな。うまかったぜ。腹減ったろ、飯行こう」とAさん。鰻をご馳走になった。

その後もAさんには度々ご馳走になった。

0 件のコメント:

コメントを投稿

秘境Y

 「最近、県北方面での仕事がよく来るんだけど、この前この近くの集落に行ったんだよ。そこがなんだか凄い秘境っぽいところでさ。建物がみんな古くて。で、さらに奥があるみたいだったんだけど、ちょっと行ってみていい?」 昼食を食べるところを探して走っている最中だったが、まだそれほど腹の減っ...