2019年11月26日火曜日

雨天

「だからさ、撃つ方だって命懸けだったんだよ」
宮﨑監督は煙草を持ったまま腕組みしようとして、おっと、という風にちょっと手を泳がせた。

初期の火縄銃が、いかに危なっかしく不完全な兵器だったか。瀬戸内の松林の話は、いつの間にか鉄砲の話になっていた。

「ここから撃ってあそこの白い建物、あの壁のどこかに当たれば上出来。狙って当たる距離は50mぐらいだったはずだよ。真っ直ぐ飛ばない。外したら今度は自分がやられる・・・」


英国の愛好家がマスケット銃で3発撃ったら耳から血が出たとか、そんな事を話しているうちに、監督はシガレットケースの煙草を残らず吸い切ってしまった。

「煙草・・・」

呟きながら監督はズボンのポケットからクシャクシャになったハイライトの袋を出して、中身のないのを確認すると雨の降っている窓の外をチラッと見て

「めんどくせ」

やにわにカウンターの灰皿に手を伸ばして、吸い殻を伸ばし始めた。

シケモクに火を点ける監督の動きは次元大介そのものだった。

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